目覚めた場所は高級なホテルのような一室のベットの上だった。
今まで入った事の無いような高級感溢れるシックな家具に囲まれた部屋。
まるで、金のある人間が泊まるようなホテルだった。
ダッシュツルートb
「具合・・どう?」
ベットの横から少女の声がした。
この声は確か・・・アーニャと呼ばれていた少女だろう。
「私の顔・・見える?」
少女は心配そうにスザクの顔を覗き込む。
「・・僕は・・・・」
そう言って体を起こそうとしたが、力が入らない。
アーニャはスザクの肩を押さえ、首を振った。
「まだ・・起きちゃダメ。睡眠薬が切れてないから。」
”睡眠薬”、その言葉にゾッとした。
軍人の身でありながら、何と言う失態だろう。
捕虜にされた上に薬まで飲まされた。
その上、動く事すらできないなんて・・。
「・・血、吸われた所・・痛い?」
アーニャはジノの噛み付いた首筋を触る。
「っく・・・!!」
スザクは思わずうめき声を上げた。
「美味しそう・・・ジノだけなんてズルイ・・・。」
舌でジノの噛み付いた場所を舐めた。
そして、首筋にゆっくりと牙を立てる。
スザクはヒクッと体を強ばらせた。
バンッと言う音と共に部屋のドアが開いた。
「たっだいま~っ!!!!!アーニャ、いい子にしてたか~?」
スザクとアーニャを見て、ジノはその場に固まる。
アーニャはスザクの首に腕を巻きつけ、ムッとしたような顔で言った。
「今から・・飲む所・・。出てって。」
ピシャリと言い放つと、今度は急性にスザクの首筋に牙を付き立てた。
そして、ややゆっくりと血を啜る。
「っん・・・ぁ・・・・・っはぁ・・」
スザクは虚ろな眼で天井を見上げる。
気持ちいい・・・けれど、むず痒い・・・。
そんな感覚に襲われる。
ジノはそんなスザクの表情をジッと眺めていたが、ふいと部屋を出ていった。
ジノが出て行ったのとほぼ同時にアーニャが顔を上げ、スザクの表情を伺う。
「・・・辛い・・?」
アーニャは心配そうにそう言った。
スザクは荒い呼吸を繰り返しながら、アーニャの頭をそっと撫でる。
「辛くは・・無いよ・・。でも・・」
続きを言う前に、スザクの腕がベットに落ちた。
睡眠薬が回ったのだろう。
ヴァンパイアの牙には、ほんの少しだが睡眠薬と同じ効果がある。
血を吸われた者は、そう長く起きてはいられない。
「・・・でも・・何・・?」
アーニャは続きを促した。
だが、返事は返ってこない。
「起きたら・・聞こう・・。」
アーニャは足早に部屋を後にした。
『でも・・・何か、足りない気がするんだ・・・。もっと・・大きな刺激がほしい・・。』